【症例1】

4才 日本ネコ 元気な去勢オスのネコさんです。  

『3日前から前足から出血があり、歩行時に痛みがある様子』との主訴でご来院されました。

右前肢の第三指(中指)爪の生え際にシコリを確認しました。

レントゲンでは患部の骨が解け始めている様子と、細胞の検査では黒色顆粒を含む細胞が多数確認されました。

状況から腫瘍の可能性が高く1週間後に第3指を切除する手術を実施しました。

病理検査の結果は『爪床悪性黒色腫』で、今後もリンパ節転移など定期的なチェックが必要との指摘でした。

猫の悪性黒色腫

メラノーマ、黒色肉腫とも言われます。

シコリが『黒色』でないこともあります。

一般的には『黒色腫』『黒色肉腫』は黒色なのですが、必ずしも黒色ではありません。

眼球、口腔、皮膚の発生が多く、転移率も高いと言われています。

先ず外科的切除が一般的な治療になります。切除が困難な部位では放射線療法や抗がん剤治療が選択されることもあります。

今回紹介した症例のように若齢での発症が多いと言われています。

【症例2】

12歳 去勢オス M.ダックス 

口腔腫瘤の切除とともに歯科処置(スケーリング・抜歯)を実施

口腔内腫瘤の病理検査結果は『口腔の悪性黒色腫(高悪性度)』とのこと。

悪性度が高く近傍リンパ節や遠隔臓器(肺など)へ転移する可能性が高い状況でした。

手術から4カ月が過ぎ・・・

手術後の経過は良好で、元気に生活していた矢先、呼吸が苦しそう・・・ゲホゲホする・・・との主訴でご来院いただきました。レントゲン画像で病巣が肺転移していることが確認されました。

そして間もなく、天国に旅立っていきました。

犬の悪性黒色腫

黒色腫には『良性』のメラノサイトーマと、『悪性』のメラノーマがあり、今回は悪性について書きます。

メラノーマは口腔、口唇、爪床に多く発生します。シコリは黒色、茶色、赤色、白色を呈することがあります。

メラノーマは全身臓器、近傍リンパ節へ効率に転移することから、黒色腫を発見した際には他の病変がないか入念にチェックする必要があります。腫瘤が広がっていく力(局所浸潤性)が強く、爪床にシコリが発生した場合は断指あるいは断脚手術を行うことがあります。手術が困難な場合には、放射線治療や抗がん剤の腫瘤内注入などの治療が行われます。

今回紹介した症例のように、浸潤・転移しやすい悪性腫瘍です。

手術が終わっても安心せず、定期的な治療を強くお勧めします。

黒色のシコリができたからと言って直ちに『悪性』と決めつけることはできません。先ず早めに細胞診を実施し、悪性度の把握と積極的な外科的切除をお勧めします。