こんにちは。看護師の須崎です。

今回はご存知の方もいらっしゃると思いますが、わんちゃんやねこちゃんが食べて中毒を起こす可能性がある食べ物を5つ紹介させていただきます。

1.チョコレート

 いちばん来院の頻度が高く、中毒を起こすのはわんちゃんで多く見られます。ねこちゃんも中毒を起こしますがまれです。

 中毒を起こすワケ

  チョコレートにはメチルキサンチン誘導体である、テオブロミン、カフェイン、テオフィリンという化学物質が含まれています。これらを摂取すると、細胞内のサイクリック  AMPの増加やカテコールアミンの増加、アデノシン受容体の競合的拮抗を引き起こします。このような作用により、中毒症状が引き起こされると考えられます。

 摂取すると危険な量

  チョコレート中毒の臨床症状は、中毒物質であるメチルキサンチン(テオブロミン、カフェイン)の量によって変わり、カカオ含有量が多ければ多いほど中毒症状が出やすいです。

 チョコレート中毒の症状

  臨床症状は一般的に摂取後1~6時間後にあらわれます。初期は落ち着きがなくなり、多飲、嘔吐、下痢が認められます。進行すると活動亢進、多尿、振戦、痙攣発作が認められることがあります。

  その他、頻脈、心室性期外収縮、頻呼吸、チアノーゼ、高血圧、高体温、昏睡なども起こります。

  チョコレートの大量摂取によって不整脈あるいは呼吸不全が起こることで、まれではありますが死亡することもあります。

  また、脂肪分が多いチョコレートを摂取した場合は、摂取後24~72時間に急性膵炎を発症する可能性もあります。

2.ネギ類(タマネギ、ナガネギ、ニンニク、ニラなども含む)

 わんちゃん、ねこちゃんも中毒を起こす食べ物です。

 中毒を引き起こすワケ

  ネギ類に含まれる有機硫化物が消化管で吸収され、代謝を受けて強い酸化物質になることで、溶血などの毒性を示します。

  有機硫化物に赤血球内のへモグロビンが酸化された結果ハインツ小体を形成し、これらは脾臓や肝臓においてマクロファージに貪食されます。また、形態を維持できず血管内溶血を引き起こします。

  猫では、赤血球の膜タンパクが酸化された結果、変形した赤血球となり、マクロファージの貪食を受けるか、溶血を引き起こします。

  実際の貧血は数日後に発症することもありますが、ハインツ小体や変形赤血球は、摂取後24時間以内に確認されることもあります。

 ネギ類の中毒の症状

  その他の臨床症状としては、活動性の低下、ヘモグロビン尿、黄疸、頻呼吸、頻脈、運動不耐性、虚弱などが認められます。腹部痛や嘔吐、下痢などの消化器症状も認められることもあります。

 摂取すると危険な量

  犬で15~30g/kgとされているのに対し、猫ではたったの5g/kgで血液性症状の変化を引き起こす可能性があります。

3.キシリトール

 ガムやタブレットを食べてしまう事例が多いです。たった一粒でも危険な食べ物でわんちゃんに多く見られます。

 

 中毒を起こすワケ

  キシリトールを摂取するとインスリンが大量に放出され、摂取後30~60分で低血糖に陥ります。低血糖は、摂取後12時間後まで起こりえます。

  また因果関係はわかっていないのですが、大量に摂取した場合、肝不全および血液凝固異常を生じる可能性もあります。キシリトールの摂取量が多ければ12~24時間以内に肝酵素が上昇します。インスリンの放出に伴い、細胞内にグルコースが取り込まれると同時にカリウムおよびリンの取り込みが生じ、低カリウム血症および低リン血症を引き起こします。

肝障害が生じた場合、二次的に血液凝固障害を認めることもあります。

  摂取した量によって肝障害が起こる、起こらないが決まるかはわかっていません。個体差が多いのではという意見もあります。

 キシリトール中毒の症状

  摂取後30~60分程度でまず低血糖症状に伴う嘔吐、傾眠、運動失調が生じます。さらに低血糖が進行すると、虚脱、発作が生じます。

 摂取すると危険な量

  キシリトールガム1粒のキシリトール含有量は、製品によってさまざまですが、1粒0.3~1.3g程度です。インスリンの放出による低血糖は、キシリトール0.1g/kg以上で生じる可能性があります。

 一方、急性肝障害は、キシリトール0.5g/kg以上で生じる可能性があります。摂取後9~72時間以内で認められます。

4.ブドウ、レーズン

 急性腎不全で死んでしまうリスクのある食べ物で中毒を起こすのはわんちゃんに多く見られます。

 中毒をおこすワケ

  どうしてブドウやレーズンによって中毒になるのかは、まだ解明されていません。原因物質として、オクラトキシン、フラボノイド、タンニン、ポリフェノール、モノサッカライドなどが関係しているといわれています。

 また、摂取した量によって中毒になる、ならないが決まるのかも、わかっていません。

 ブドウ中毒の症状

  摂取後24時間以内に、嘔吐、食欲不振、傾眠、下痢が起こり、摂取後48時間以降に急性腎不全を発症します。

 摂取すると危険な量

  過去の報告によると、生のブドウは19.6~148g/kg以上、レーズンは2.8~36.4g/kg以上が中毒量といわれています。別の報告では、致死量は4~5粒/kgともいわれています。

  しかし、1kgのブドウを食べても無症状だったという報告もあり、ブドウの種類による影響や犬種などによる個体差があるのかもしれません。

5.ユリ

 死亡する可能性が高く要注意な植物で中毒を起こすのはねこちゃんに多く見られます。

 中毒を起こすワケ

  どうして中毒になるのか、正確には分かっていませんが、中毒性の尿細管上皮障害と、多尿や嘔吐に起因する重度の脱水による続発性の腎障害の2つの段階があることがわかっています。治療法としてはできるだけ早期の輸液療法が有効とされています。

 摂取すると危険な量

  ユリのなかでも、ユリ属のもの(テッポウユリ、オニユリ、アジアンティックリリー、ヤマユリなど)は、植物の一部(花びらや葉や茎、花粉など)を少量摂取しても中毒が生じる可能性があります。例えば葉っぱ1枚でも、中毒が起こりえます。

 ユリ中毒の症状

  臨床症状は摂取後12時間以内に発症することが一般的で、嘔吐、食欲不振、沈うつ、多飲・多尿を引き起こします。

  症状は嘔吐から始まり、摂取後4~6時間以内にいったん治まり、一見問題が改善したかのように見えることがあります。

  腎不全は摂取後24~96時間以内に発症します。クレアチニンの顕著な上昇を伴う高窒素血症が発症し、尿検査では、尿糖、タンパク尿、等張尿が認められます。尿沈渣塗抹では、尿細管上皮の破綻を示唆する尿細管円柱が認められます。

以上になります。

私たちの生活しているなかで身近なものになると思いますので、誤食しないように気を付けていただけたらと思います。

もし食べてしまったら、早期治療が必要な場合もありますのですぐにご連絡下さい。

また、今紹介させていただいたもの以外にもまだまだわんちゃん、ねこちゃんにとって危険な物もありますので、病院に行った方がいいのか?と悩まれた時はいつでもご相談下さい。