尿道閉塞とは、何らかの原因で尿道が詰まって出ない状況です。結石や血餅、尿道栓子が詰まるケースが多いです。

『尿が出ない』という症状が時に軽視され1~2日間家庭で経過観察されてしまうケースがあります。尿が出ない…?したくない?ちょっと出てる?の判断は確かに難しく1日経過観察してしまうのは理解できるのですが、『尿が出ない』状況は命に関わりますのでとにかく早めに動物病院へ!!

今回、ワンちゃんが『2日前から咳をして元気がない』との主訴で来院され、血液検査結果では腎障害を疑い…飼い主様は『そう言えば、オシッコがポタポタしか出なくなった』とのことでした。

精査の結果、膀胱・尿道結石による膀胱破裂でした。

その夜、緊急手術で原因の膀胱結石をお腹中や膀胱から回収して、破れた膀胱を縫い合わせて、尿がちゃんと出るか確認して手術を終えました。

≪症例≫オーストラリアン・シェパード  オス(去勢) 10歳 既往歴:特になし

主訴: 2日前から咳をして元気がない 。今日3回嘔吐した。

血液検査でBUN 81.9mg/dl、CRE 5.25mg/dlと高値。超音波で重度膀胱炎と膀胱結石を認めました。急性腎障害?と判断し入院治療をスタートしたのですが、膀胱が膨らまなかったり、尿が出なかったり・・・通常の腎障害ではなさそうで造影剤を用いて逆行性尿路造影検査を実施したところ膀胱破裂していました。

造影剤が膀胱内に留まらずに、腹腔へ流れ出てしまっている

膀胱破裂の治療のため緊急手術を実施しました。

お腹の中は腹水(漏出液、尿、血液や造影剤)が多量に漂う状況で、膀胱には多量の血餅が癒着していました。膀胱にこびりついた血餅を剥がすと膀胱が破れていて、破裂部位のそばに10個程度の結晶(膀胱結石)が確認されました。

膀胱粘膜にはボコボコしたポリープ状のシコリが多数できていました。ポリープ状のシコリを切除し病理検査を実施したところ結果は『増殖性膀胱炎』でした。

続いて膀胱の破裂部位の壊死組織を切除し、きれいにして縫合します。最後に膀胱の縫合がうまくいっているか、漏れがないかを確認し、尿がちゃんと出るか確認して手術終了です。

尿道閉塞を起こしていた膀胱結石は『シュウ酸カルシウム』という結晶でした。増殖性膀胱炎は、膀胱を構成する細胞”移行上皮”が増殖して過形成を起こしボコボコした状態になる膀胱炎です。今回のようなポリープ状のシコリは膀胱結石や慢性膀胱炎に続発して起きます。

順調に回復し、手術後2泊入院を経て元気に退院していきました!!