白血病とは・・血液のがん。白血病細胞が骨髄を占拠し、正常造血機能を抑えるために、正常の血液細胞(赤血球、白血球、血小板)が産生されなくなります。

白血病をを引き起こすので『白血病ウイルス』という名前が付いていると思われます。ただ、ネコの白血病ウイルス感染症の病態は白血病だけではありません。発熱、口内炎、免疫不全、リンパ腫、白血病、貧血など症状は様々です。

白血病ウイルスの感染はウイルス保有猫との接触感染で起こり、毛づくろい、飲食の共有などで感染します。胎盤感染、乳汁感染、交尾感染も起こります。比較的感染力が高いウイルスなので、同居ネコがいる場合は同居させないように!と飼い主様にはお話しします。ただ…1歳以上の健康な猫はこのウイルスに持続感染せずに、ウイルスに打ち勝つことが出来ます。絶対に打ち勝つ!!と断言できないので同居ネコがいる場合は同居させないようにお話ししています。

白血病ウイルスを撲滅させる薬剤は現時点でありません。

白血病ウイルスに感染・発症すると、口内炎、歯肉炎、発熱により食欲低下の症状で来院されるケースが多いです。黄疸、嘔吐、貧血、呼吸速迫も見られます。白血病ウイルスに感染している猫が食欲不振になった場合、食欲不振の原因が果たして本当に白血病ウイルスなのか・・・他に原因があるのか・・・苦慮するケースはとても多いです。

症状がいわゆる風邪の症状の場合は、点滴をしたり抗菌剤で様子を見ることが多いです。症状が進行し白血病ウイルスによる免疫不全が疑われる場合、インターフェロン、ステロイドを使用します。 白血病やリンパ腫を発症している場合、難治性である旨を説明し、飼い主様と相談のうえ治療方針を決めていきます。

【リンパ腫を発症した症例】

日本猫 推定6歳 去勢オス

『ここ2週間嘔吐頻度が増した』との主訴で当院初診

体重 5.0kg  体温 37.7℃(平熱でした!)

【血液検査】

白血球数:OVER(測定限界以上) 赤血球数:7360000/μl(Ht:37.1%) 血小板数:133,000/μl

BUN 36.4mg/dl ALT 71U/l AST 567 U/l  ALP 172 U/l  T-Bil 0.9mg/dl

猫白血病ウイルス:陽性(+)

通常のリンパ球に比べて2~3倍の大きさのリンパ球が多く見られている。

【レントゲン画像】

胸腺の腫大と胸水によって心臓が識別できないほど胸部が真っ白に映っています。

胸水がたまって心臓が動きにくくなり、肺が広がらない状況。

【超音波検査】

上記症例のように『白血病ウイルス感染症によるリンパ腫』を発症してしますと、あまり著効する治療法はありません。

ステロイドや抗がん剤によるリンパ腫の治療を行うことがメインになりますが、白血病ウイルス感染症をどこまで食い止められるか・・リンパ腫の治療だけでも本人の負担・費用はかかります。その背景に白血病ウイルスという特効薬のない感染症があるとなかなか良好な治療反応は期待できません。厳しい状況である旨を飼い主様へお話しし、今後どのように治療を進めるか決めていく必要があります。

本症例では、飼い主様から『治療が難しいようなら自宅で看取る』とのお話があり、翌日に亡くなったとのことです。

多くの文献で『白血病ウイルス感染症では3~4歳で亡くなる。』とされています。が、5~6歳まで生きるケースも多々あります。