胆嚢という臓器をご存じでしょうか?胆嚢とは肝臓で作られた胆汁を貯蔵する袋で、肝臓にへばりついています。この胆嚢内で胆汁(サラサラ)→胆泥(ドロドロ)に変化し、さらに胆泥が胆嚢に溜まった状態を【胆泥症】と言います。胆汁(サラサラ)→胆泥(ドロドロ)→粘液(ゼリー状)に変化し、胆嚢は徐々にパンパンに膨れ【胆嚢粘液嚢腫】を発症します。コレステロール値が高いと胆泥症になりやすいと言われていますが、必ずなるというわけではありません。また、ワンちゃんの甲状腺機能低下症も要因と言われています。
胆嚢・胆汁について(外部サイト:中外製薬)
血液検査・超音波検査を経て胆泥症・胆嚢粘液嚢腫の診断を行い、治療をスタートしますが、内科治療を続けていても悪化することが時々あります。胆泥症・胆嚢粘液嚢腫の重症度、悪化速度は様々ですが、手術が必要になるケースも珍しくありません。
胆泥症・胆嚢粘液嚢腫の治療
【内科治療】
当院では利胆剤ウルソを処方することが多いです。胆泥症・胆嚢粘液嚢腫の影響で肝臓、膵臓や消化管へも負担がかかり抗生物質や胃腸薬、肝臓薬を併用することもあります。
【連日の通院治療・入院治療】
胆泥症・胆嚢粘液嚢腫の重症化に伴い食欲低下、嘔吐や下痢の症状が出ることが多いです。上記内科治療を行いつつ、数日の通院治療を行うケースや、嘔吐が見られ自宅での内科治療が困難な場合は入院治療を行うケースがあります。
【手術・外科治療】
内科治療および点滴を実施しても症状が緩和されない場合、胆嚢切除手術を行います。胆石の摘出手術など、当院で実施困難な手術もあります。また、全身状態の悪化を伴っていてハイリスクな手術になることも多いです。
胆嚢粘液嚢腫の結果、胆嚢破裂を起こした症例
柴犬 9歳 オス(未去勢) 体重:12.4kg
【既往歴】
・甲状腺機能低下症:4年前に診断を受け、不定期に内服治療
・外耳道炎:右耳に慢性的な外耳道炎があり、症状が悪化すると点耳薬を使用
【症状】
3日前から嘔吐、食欲低下が見られ、今日から全く食べず、嘔吐が頻回起きている。
【診断】
血液検査、超音波検査等から胆嚢破裂と判断
【手術】
その日の夜に胆嚢切除緊急手術を実施、5日間の入院治療を経て退院できました。