肛門周囲に発生する腫瘍の大部分は肛門周囲腺腫 / 肛門周囲腺癌、あるいはアポクリン腺癌

肛門周囲腺腫(良性)は、尾の付け根周囲や包皮など 『肛門』以外にも発生します。ホルモン依存性の腫瘍で去勢手術をしていない高齢オスに多く見られます。精巣間質細胞腫(ライディッヒ細胞腫)を併発することも多いとされています。 去勢手術によりホルモン刺激がなくなると退縮・消失することもあります。

肛門周囲腺癌(悪性)は、見た目で肛門周囲腺腫(良性)とを判断することはできません。シコリに針を刺して細胞を検査しても悪性/良性の判断は難しいと言われています。

アポクリン腺癌(悪性)は、全身の皮膚、肛門嚢に発生します。肛門嚢に発生した場合、肛門嚢周囲へ徐々に浸潤し、多くの臓器へ転移することもあります。

さて、肛門周囲腺腫の切除手術を行ったので紹介します。

『肛門のイボから出血している!!』との主訴で来院したのは、10歳のトイ・プードル(未去勢のオス)です。元気・食欲に問題なく、元気なワンちゃんです。肛門を確認すると約2cmのシコリに少量の出血痕がありました。肛門のシコリだけでも排便障害(ずっと便意が続いたり、便がうまく出なかったり、排便時に痛みなどがある状況)が出ますが、シコリから出血(自潰)が繰り返されると細菌感染など様々な問題が出てくるので手術が必要になります。もしアポクリン腺癌のように悪性度の高い挙動をする腫瘍である可能性を考慮しても手術による切除が望ましいところです。

肛門にできたシコリの切除去勢手術背中の皮膚にできたイボの切除手術を同時に実施しました。

下の写真は手術前です。肛門の上方向にシコリが確認できると思います。肛門の下にも小さな(直径約5mm)シコリがありますが、こちらは自潰していないので手術による切除は行わないこととしました。

手術前の肛門

下は手術中の画像です。シコリに糸を通し軽く引っ張りながらシコリを切除していきます。

手術中

下の写真は手術後です。肛門は血管が豊富で、手術時に多少の出血は必ず伴いますが無事肛門のシコリ切除は終了しました。この後、去勢手術と 背中の皮膚にできたイボの切除手術 を行い手術終了となりました。

手術後

手術後、排便に伴い出血することは珍しくありませんが、このトイ・プードルさんは術後経過も良好で、排便に伴う痛みや出血は見られなかった!とのことでした。10日後に抜糸を行いました。

切除した肛門シコリの病理検査結果は『肛門周囲腺上皮腫』良性の腫瘍でした。今回切除しなかった肛門下方向のシコリ(直径約5mm)は今後縮小・消失してくれると良いのですが今後も観察が必要です。