『肛門に米粒のようなものがついている』

『ウンチに米粒のようなものが付いている』

『ウンチの中で白いものが動いた…』

という異常に気付き、来院されるケースが多いです。
下の写真は直径約4mmの白い瓜実条虫の片節、その片節を顕微鏡で見た画像です。
3枚目の写真には条虫の卵が多数見られます。

   

寄生虫性腸炎といって、下痢、便秘、嘔吐、腹痛などの症状を伴って来院されるケースもありますが、無症状の事が多いです。多数寄生すると出血性腸炎を起こす事があります。

 

仔犬・仔ネコを新しく迎え入れた際には検便をしておくのが良いでしょう。

ただし…今回ご紹介する条虫(瓜実条虫、猫条虫、サナダムシの仲間)という寄生虫は、当院で通常行う検便(浮遊法)で検出されません。

動物病院の多くで(ほぼすべての動物病院で)検便は行っていますが、この条虫は検出率が低く、多くの場合飼い主様が先述のように『ウンチに米粒のようなものがついている』と異常に気づいていただき発見されます。成虫は消化管の中で50~60cmにもなるのですが、発見されるのは『片節』という成虫の身体の一部分です。片節の中に多数の虫卵が含まれています。

 

瓜実条虫の感染には、ノミ(イヌノミ、ネコノミ)が重要な役割を果たしています。瓜実条虫の虫卵をノミが食べると、ノミの体内で瓜実条虫の虫卵が幼虫になり、グルーミングの際にノミがネコの体内に入ると、ネコの消化管内で瓜実条虫の幼虫がさらに発育し1ヶ月程度で成虫になります。成虫になると虫卵を含む片節を放出し、犬・ネコの便として放出された片節はまた、ノミに食べられる機会を待つのです。そして虫卵を取り込んだノミは他のネコへ飛び移り条虫の伝搬役を担うようになるのです。

 

猫条虫の感染には、ネズミが重要な役割を果たします。野良ネコ(屋外にいる猫全般)は遊び、食事の為にネズミを捕まえます。ネズミ体内に感染力のある猫条虫の幼虫が含まれているのです。遊び・食事の為にネズミを捕獲した際に感染が起こり、ネコ体内で猫条虫は成虫に発育し、虫卵を含む片節を便として放出するようになります。

  

新たにネコを家族に迎え入れる際、たとえ検便で異常がなくても寄生虫駆除を行う事をお薦めします。寄生虫駆除薬はとても安全性が高いので是非ともしっかり駆除していただきたいです。ただし寄生虫といっても様々な種類があり、駆除薬も様々です。ヒトからもらった薬、市販薬を無暗にネコへ投薬する事はお勧めできませんので、気になる事がありましたらお気軽にご相談ください。