閲覧注意(手術中の画像を含みます)
腸が腫れる原因は様々で、寄生虫・細菌・原虫・ウイルス・薬物による炎症、異物誤食による閉塞、免疫や神経の病気、血管やリンパ管の病気、ストレス等で腸の運動機能が低下したり腫瘍などシコリが出来ても腫れます。原因不明なこともあります。
猫の消化管腫瘍の内訳はリンパ腫(約55%)、腺癌(約25%)、肥満細胞腫(約15%)、その他(数%)となっています。多くが悪性腫瘍です。
ご来院いただく際の状況は多くのケースで中〜高齢、体重低下、嘔吐頻度の上昇を伴う場合が多いです。急に全く食べなくなったり、ここ1週間で徐々に食べなくなったなど食欲低下も1つのサインです。肝臓に負担がかかり肝機能障害、黄疸、低蛋白血症が見られることもしばしばです。
【症例1】
9歳4ヶ月 日本猫 去勢オス
主訴:2週間前から食欲低下(チュールは食べる)、水も飲まない、少しぐったりしてる。
全身の血液検査(生化学検査)では大きな異常がありませんでしたが、エコー検査で消化管腫瘤を確認し、腫瘍又は詳細不明な消化管穿孔と判断し手術を行いました。当時例のように、消化管にシコリがあっても必ずしも血液検査で異常が確認されるわけではありません。

開腹すると、消化管組織が自壊(腫瘍組織が壊死して崩れ、破れて出血や浸出液を伴っている状況)していました。

自壊しいたシコリを切除し、消化管の断端を繋ぎ合わせた後、縫合の確認(リークチェック)を行いました。

手術時には患部周囲に炎症が波及しており、術後回復が順調に行くかととても心配な状況で、ドレーンを腹腔に設置し、手術終了としました。手術後、お腹の中で出血や炎症を確認するためにドレーン(下の画像でグルグル巻の管)をお腹に固定してします。


ドレーンから回収される液体は手術後2日でほぼ透明になり、体調が回復する傾向が見られたのでドレーンを抜きました。
手術後3日目で下の下痢がありました。これは来院の2週間前から食欲が落ちほとんど食べていない状況下で消化管内に残っていた食物残渣が手術を経てようやく腸の動きを取り戻した結果出てきた便なので悪い状況ではありません。

手術後2日目から少量の飲水、3日目から流動食を開始しました。回復は順調で手術後5日で退院となりました。
⬇️手術後1週間ほどして病理検査結果が出ました。

病理(細胞の検査)結果は『消化管腺癌』、悪性腫瘍でした。
手術で完全切除していても、お腹の中やリンパ節に転移、再発する可能性が高い腫瘍でした。
手術後6か月が経ち、幸い元気に生活できていますが、今後も心配なので1〜2か月毎に健康チェックし経過観察としています。
【症例2】
11歳6ヶ月 日本猫 避妊メス
⬇️2年前、頻回嘔吐と食欲減退で来院いただいた際のエコー画像です。
消化管に液体が溜まっている部分と、狭窄(通過障害を起こしている)している部分がありました。

狭窄部位を手術で切除し、残った消化管を繋いで手術は終了しました。病理検査結果は『リンパ腫』。

(2年前にリンパ腫で消化管腫瘤を切除し、その後しばらく抗がん剤治療を経て最近1年間は抗がん剤を終了している状況でのご来院でした。)
主訴:昨日から頻回嘔吐し、呼吸が辛そう。
エコー検査で消化管にシコリを認め、リンパ腫の再発と判断

2年前のように手術でシコリを手術で切除してみるか、抗がん剤を再開させてみるかを飼い主様と話し合い、抗がん剤の再開を選択しました。
L-アスパラキナーゼという抗がん剤注射を1年ぶりに再開させました。
L-アスパラキナーゼによる治療の4日目から「チュール食べれました!」「爪研ぎできました!」と体調が改善してきました。逆に言うと4日目まではぐったりしていて心配な状況でした。
毎週1回、L-アスパラキナーゼを注射します。6週が過ぎた頃、急に便が出ていない・・・今日から食欲がなくなってきた、とのこと。体重変わらず(便が出ていないから?)でしたが、体温39.0℃の微熱でした。もっとオーナー様との楽しい時間が続くと思っていた最中、体調が悪化し、3日後、天国へ旅立ちました。

【所感】
今回、根治困難な消化管腫瘤を認めた2症例を紹介しました。
症例1及び2は、診断名は異なりますが、『悪性腫瘍』という点と、病理検査にて『進行した病態と思われますので、今後も局所再発、播種性転移、他臓器への遠隔転移など病態の悪化には厳重な警戒が必要と思われます。』との記載がありました。飼い主様にとって耐え難い不安な結果だったと思います。
手術後無治療で6か月を迎えられた症例1のネコさん、手術後抗がん剤も頑張ったのに再発してしまったネコさん、十人十色で診断/治療を行う上で今後の見通しを断言できる症例は少ないのかもしれません。分かることは分かるし、分からないこともしかり。見通しが分からない中でも飼い主様の思いをできるだけ汲み取り、症例の治療に活かしたいと思います。
かけがえの無い家族が私たち飼い主を追い越して天国へ旅立つ・・・分かっていた事でも受け止めることは困難です。動物病院の役割として、治療はもとより、飼い主様に心の準備をする時間を設ける事も出来ることの1つかもしれません。心の準備がどこまで出来るかは飼い主様にもよりますが動物病院での治療を経て何とか元気になって退院できると飼い主様に心の余裕が出来るように思います。『さすがに次は厳しいか…』とか、『うちの子は十分頑張った!!もう天国で楽しく遊びなさい』と言うような心の準備です。悪性腫瘍の治療として根治治療は『手術・抗がん剤・放射線』と言われています。どのように治療を行うかは様々ですが、根治治療を目的にした治療では少なからず動物への苦痛も伴いますので、当院でできる治療法を提案したり、当院で対応困難な状況であれば他院を紹介させていただきながら、飼い主様のお役に立てるようスタッフ一同頑張っていきたいと思います。
飼い主さまにとっては、辛い現実でブログ掲載して欲しくない場合もあると思いますが、当院の紹介として小手指ペットクリニックではこんな治療をしてますよ、という情報提供になればと思いブログ掲載します。
乱文で申し訳ありません。