尿道に何かが詰まって排尿できない、排尿しにくい状況を尿道閉塞といいます。
『ペニスの先端から何か出てる』との主訴で来院したネコさんです。
【症例】
1歳2か月齢 オス(7か月齢で去勢手術済み)
体重5.3kg 1か月前にストルバイト結晶による尿路閉塞歴あり
『今朝まで排尿に問題なかったが、帰宅したら頻回トイレに行くのでペニスを確認したら何か出ていた。午後から食欲がない様子で帰宅時にエサがお皿に残っていた。嘔吐跡があった』とのこと。
来院時のペニスの状況がこの状況です。
ペニス先端にカサブタのようなものが・・・尿道粘膜?尿道栓子?トイレの砂がペニス先端で固まった?等を考慮し、鎮静処置をして精査する必要がありました。
どうやら尿道栓子らしいのでゆっくり引き抜くと・・・
こんなに長い尿道栓子は初めてです。3~4cmあります。恐らく数日前から膀胱炎が再発し(ストルバイト結晶が最も可能性高い)、膀胱内の炎症産物(細胞の死骸など)が尿道内ペニス手前でゼリー状に堆積することで『栓子(プラグ)』になってしまったものでしょう。
雄ネコの尿道閉塞は珍しい事ではなく、比較的よく遭遇する症状ですが、重症度・緊急性は様々で膀胱破裂や命の危険性を伴う症例も珍しくありません。
尿道栓子による尿道閉塞も時折見られますが、こんなに長い尿道栓子が採取されることは珍しいと思うのでブログ掲載しようと思います。
尿道閉塞により入院するような重症例も多いのですが、このネコさんは飼い主様のお話から少なくとも朝まで排尿ができており、血液検査で異常がなかったので鎮静処置後体調が安定したらすぐ帰宅となりました。
尿道栓子の原因としてはストルバイト結晶の可能性が高いというのは先述しました。そもそもストルバイト結晶は尿に含まれる各種ミネラル、老廃物が結晶化することで形成されます。正常な猫の尿中にもストルバイトの材料となるイオンが多く含まれており、尿のpHや濃縮率等の個体差により結晶が形成さる個体、形成されない個体がいます。若齢かつオスでは特に多く見られる結晶です。食餌療法により治療可能な場合が多く、食餌療法の鍵となる要因は、尿のpHを低下させ(尿を酸性化させ)、マグネシウムを制限し、飲水量を増やすことです。
ということでこのネコさんも食餌療法によりストルバイト結晶を防止し、定期的な尿検査を続け行く必要があります。若いウチは濃い(濃縮率の高い)オシッコをします。いつか8歳とか10歳になってやや薄い(濃縮率の低い)オシッコをするようになるまでは気が抜けません。10歳になったらストルバイト結晶ができないということはないので、いつでも心配なのですが、濃縮率の低い尿をするようになると尿に結晶ができるリスクはかなり下がるのは事実です。
当院では、ユリナリーS/O(ロイヤルカナン)、C/d(ヒルズ)、尿路ケアS/O(ベットライフ)、ストルバイトケア(ドクターズケア)などを取り扱っています。詳しくはスタッフまでお問い合わせください。また、当院では療法食等の在庫を蓄えていません。商品のご予約をいただいてから納品までに時間がかかる商品もあります(5日程度かかる商品があります)。時間に余裕を持った注文をお願いします。