猫はしなやかな動きで高所へのジャンプなど軽快にこなしますが、時に怪我や骨折することがあります。

原因は様々で不慮の事故(交通事故や高所からの落下)が多く見られます。ペットが布団の中で寝ていたら気づかず踏んでしまったなんてこともありますし、外へ出かける猫は地域での“虐待”を疑うケースもあります。“虐待”なんてと驚かれると思いますが、外へ行く猫が突然怪我、骨折をして帰ってきた場合、事故なのか何なのか分からないケースは多いと思います。余談ですが、猫は反射神経が鋭く瞬発力がある動物です。何か咄嗟に逃げた時など自らの瞬発力で骨折するケースもあると言われています。

さて今回、骨折の原因は不明ですが『外へ行くネコ』の骨折症例をご紹介します。

症例1 

1歳1ヶ月 メス(避妊手術済み)

主訴:昨日外出して帰ってきたら左後肢を挙上している。

診断:左後肢中足骨骨折(4本)

1〜2本だけなら手術せずギブスなど外固定でも治療できるか・・と思いますが、4本すべて折れていたので手術1択と判断しました。

骨折している骨にピン(髄内ピン)を挿入し、骨折端が治癒するのを待ち、治ったらピンを除去する計画を立てました。

診察当日のレントゲン

手術直後のレントゲン

手術後1週間腫れが続き心配しましたが、飼い主様にもバンテージ交換等のご尽力をいただき徐々に腫れが引いてきました。

手術後7週間後のレントゲン

骨折の治癒(骨折端の骨化)が見られたので、ピンを除去しました。

下の画像は 抜ピン前と抜ピン後の画像です。

骨折の治癒(骨折端の骨化)が見られたので、ピンを除去しました。

抜ピン後1週間は患部にバンテージを巻き、安静に生活してもらい問題なければ治療終了としました。

症例2

10歳 オス(去勢手術済み)

主訴:昨日から右前足を痛そうにしている。

診断:右前腕尺骨粉砕骨折

尺骨が大きく斜めに骨折していて、骨折端が細かく割れていました(斜骨折と粉砕骨折)。

少なくとも4片以上になっています

骨にプレートを当て、ビスで固定するプランを立てました。

術後しばらく順調だったのですが、1ヶ月ほどして患部チェックすると、肘からプレート一部が皮膚から露出していました。そこで、予定より早いですが、今後の細菌感染を考慮しプレートを抜き取ることにしました。

幸い、プレート抜去後2・3日足をかばう様子がありましたが徐々に快方に向かい治療終了となりました。

【所感】

病院に行く際1回の通院で完結するのが良いのですが、多くの病気でそうは行きません。

再検査があったり、定期的に病院へ行くと思いますが骨折治療もなかなか1度の通院では完結しません。安静にすることが困難な野外動物、外へ行くペットの治療は治療計画を立てるのも、飼い主さんの理解を得るのも難しいケースがあります。飼い主さんも外に行くペットの診察予定を立てるのは大変だと思います。あと費用も・・屋外に行く動物にウン万円なんて払えない!!と言う方もいらっしゃると思います。

症例1の髄内ピンを用いた治療では、ピンの1部が皮膚から突出し、その突出した部位から細菌感染が起きやすいので毎日バンテージ交換をしてもらいました。幸い症例1の猫さんがバンテージを許容してくれたので功を奏しましたが、もしバンテージをかじり取ってしまう猫ちゃんならエリザベスカラーを常時付けたり生活の制限が必要だったと思います。また抜ピンまでの7週間、外出禁止に協力してもらいました。定期チェックする中で「昨日外に行っちゃって・・・」(元々外へ行く猫ちゃんは何だかんだ隙を狙って出ていってしまうんですよね・・・)という話もありましたが、無事、抜ピンの日を迎えられて良かったです。

できれば外へ行って欲しくないです。元々外へ行く猫は、退院して自宅に帰ってからも外へ行ってしまう可能性が高いです。骨折原因は不明なケースが多いですが、外には骨折する原因が溢れています。せめて治療が終わるまでの間完全室内飼育をお願いするのですが、実際には飼い主が気をつけていても脱走してしまうケースも少なくありません。まだ安静にしていて欲しい時期に外へ行くと再骨折の可能性も十分あります。手術部位にバイ菌が入ってしまうリスクもあるし、不自由な患肢をかばいながら外へ行くとしっかりジャンプできない、狭い隙間を通り抜けれない、喧嘩に負けやすくなるなど危険がいっぱいです。外へ行く猫ちゃん、手術後大人しくできないワンちゃん猫ちゃんもケージを準備していただくと退院してからしばらく安静に過ごしていただくことが出来るかもしれません。

外へ行く猫にはそれなりの幸せ・理由があるのでしょうが・・できれば外へ出て欲しくないですよね。外で他人様に迷惑をかける。その人から恨まれ、虐待を受ける可能性だってある。他の猫と喧嘩すると勝ち負けに関わらず怪我したり、感染症をもらったり。体調を壊した際に外で何をして、何を食べたか分からず不安になる。地域の皆様から愛される猫もいますが誰かの家に引き取られたのか失踪したのか・・突然の別れが来ることもあります。交通事故に遭ってもそれは運命・・ もちろんこれらを受け入れての事だとは思いますし、屋内飼育を頑張っていても隙をついて脱走する猫もいますからね・・・そもそも猫は気ままな動物で、私が猫なら外に行きたくなるりますし・・そこは飼い主様が何とか頑張っていただきたいと思います。ちなみにウチの猫は1歳頃に玄関の隙間からサッと脱走して、道路に出て5〜10mで立ち止まったところを捕獲したなんてことが1回ありました。それ以降は外に行こうともしません。窓辺で外を眺めているので、私が抱っこした状態でベランダに出ると怖いらしく屋内へ入ろうとします。何なんでしょうね・・・私が信用されていないのでしょう・・・