アトピー性皮膚炎は、大きなくくりではアレルギー性皮膚炎で、ハウスダストや植物の花粉、カビなどの環境抗原に対して免疫過剰反応が起き並行して皮膚のバリア機能の低下、皮膚の常在菌叢の乱れ、食物アレルギーや不安やストレスなどの心因的な要因など多数の要因が関与する疾患で、主な症状は『痒み』です。
『痒み』は被毛の脱毛、皮膚の赤み、ただれ、出血を引き起こし、自分のペットが痒いそぶりを繰り返していると何とかしてあげたい!!と思うことでしょう。
アトピー性皮膚炎は完治することが難しく、治療を継続していても悪化・再発し、そのたびに投薬(ステロイド剤など)が繰り返され飼い主の悩みが途切れない疾患です。
治療について、特にステロイドの副作用について記載します。
ステロイド療法
抗炎症作用、免疫抑制作用、抗腫瘍効果を目的に使用されます。猫に対しては精神安定作用があると言われます。多くの方がステロイド療法には副作用があるということをご存じかと思います。「薬」には多かれ少なかれ副作用があるのですが、ステロイドに関しては長期使用するケースが多々あり副作用が気になるところです。
主作用:薬本来の目的の働き
副作用:主作用以外の好ましくない働き
さて、ステロイド治療はできる限り短期間とし、減量したり非ステロイド製剤へ移行させることが理想なのですが、ステロイドをやめられない症例が多いことも事実です。
≪ステロイドとシクロスポリンの比較»
ステロイド | シクロスポリン | JAK阻害剤 | |
メリット | 即効性 安価 | 副作用が少ない | 即効性 副作用が少ない |
デメリット | 副作用 | 費用 効果が安定するまでに時間がかかる 副作用 | 費用 |
ステロイドの副作用についてZoetisジャパン㈱さんが出している冊子がとても分かりやすいので↓掲載します!!(ZoetisさんからHP掲載の了承受けてます)
「犬アトピー性皮膚炎を家族に説明するためのガイドブック」
上の画像資料7ページ『アトピー性皮膚炎を引き起こす原因物質(サイトカイン)とお薬の選択』
を見ていただくと、なぜステロイド剤が治療の切り札になるかご理解いただけるかと思います。繰り返しになりますが、ワンちゃんのアトピーにはハウスダストや植物の花粉、カビなどの環境抗原、皮膚のバリア機能障害、皮膚の常在菌叢の乱れ、食物アレルギーや不安やストレスなどの心因的な要因など多数の要因が関与しています。ステロイドは『痒みを引き起こす物質』『炎症を引き起こす物質』『免疫に関与する物質』の多方面から作用するので強い痒み止め効果を発揮します。その反面、副作用が懸念されるとご理解いただくのが良いと思います。また、ステロイドは私たちの身体で作られるホルモンであることも大事な側面だと思います。正常な体内でもともと合成している副腎皮質ホルモンをざっくり『ステロイド』と呼び、薬品として様々なタイプのステロイドが治療等に用いられているのです。ステロイドは短期間でやめる!!これも大事な考えですが高濃度のステロイド治療を急にやめることはオススメできないケースがあります。ステロイドの使用や休薬には獣医師としっかり話し合ってください。
アトピー治療に苦慮しているワンちゃん・ネコちゃんは多いと思います。
①薬の苦慮(ステロイド治療をやめたいのに他剤では痒みが治まらないケースなど)
②環境抗原の苦慮(ハウスダスト対策として空気清浄機を設置したけど痒みが治まらない・・・)
③フード選択の苦慮(フードアレルギーを疑うが、どのフードを選んだらいいかわからないケース)
④細菌感染との闘い(膿皮症、マラセチアの感染が再発するケース)
⑤心理的要因(不安症、恐怖症等で『痒み』のような症状が出てしまうケース)
⑥その他疾患の関与(糖尿病、甲状腺ホルモン疾患など『痒み』に関与する疾患が併発しているケース)
そもそも薬を飲んでくれないワンちゃん・ネコちゃんも多いです。『おいしいものを食べることが幸せ』なのにまずい療法食での生活は可哀そう・・・しかも食事療法で病気が治るわけではない。薬以外にもシャンプー療法や針灸治療、漢方やホモトキシコロジーなど補助治療法は知っているが何がどれだけ効果的かわからない!といった疑問もあると思います。シャンプー療法は膿皮症など皮膚の感染症を起こしているケースには有効ですが、これまたワンちゃんを週に1~2回シャンプするなんてなかなか継続できないケースが多いですよね。当院では漢方・針灸治療は対応していませんがやってみると『結構いいかも!!』という声も耳にします。ホモトキシコロジーはやっていただくと『意外といいかも!!』という声が多いです。費用は結構掛かります。
ハウスダストに強く反応しているワンちゃんには減感作治療が有効かもしれません。
あと、キノコ抽出成分のサプリメントも多種市販されていますね。外用保湿剤などもうまく使用してみてください。
多くの動物病院で、非ステロイド治療を模索していますがなかなか一筋縄にはいきません。 当院ではJAK阻害薬(アポキル錠)を頻繁に処方しています。ステロイドを併用しているケースもあります。抗ヒスタミン薬を併用したり外用保湿剤を提案したり辛い痒みを軽減できるよう情報提供していきます。アトピーの治療には試行錯誤が必要です。根治は難しい疾患ですから根気強く寄り添っていただければと思います。
当院の待合室に今回画像掲載した冊子『犬アトピー性皮膚炎を家族に説明するためのガイドブック』が置いてあります。
何か不明な点があればスタッフまでお声掛けください。
また、詳しい情報については下の「犬のかゆみ.com」も見てみてください(Zoetisジャパンのページです)。