『お水をよく飲む』といった相談でクッシング症候群を疑うことがあります。もちろん『水を多く飲む』という症状の原因は様々で、病気でなくても若齢であったり一時的な疲労、不安など精神的要因でも起こります。

この度、ワンちゃんが血液検査で肝臓関連の異常と『最近、お水をよく飲む』という症状からクッシング症候群が判明したのでその事例をご紹介します。

ちなみに・・・『多飲』の指標としては、1日の飲水量が体重1㎏あたり100ml程度と考えてください。体重5kgなら1日500ml、体重10kgなら1日1000ml(1L)飲むと多飲とお考え下さい。多飲が数日続く場合、体調不良の目立った症状がなくても動物病院で相談するのが良いと思います

【症例】

ミニチュア・ダックス 15才 避妊メス

『咳をすることが多くなった』との主訴で健康チェックを行ったところ、呼吸器については気道の石灰化(気道の柔軟性が損なわれ咳の原因になる)、気管虚脱(気管に窪みが生じ呼吸の妨げになる)と気管支拡張症(気管支が広がってしまう)を疑う所見が確認されました。また、血液検査で肝臓関連の異常があり飼主さんに血液検査結果の状況を説明したところ『最近、お水をよく飲む』とのお話を伺うことができました。

後日、超音波検査を実施したところ副腎が腫大(右 7.1mm、左 7.2mm)しておりACTH刺激試験を行ったところコルチゾールpost 34.2μg/dl(基準 25μg/dl以下)が見られ、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)と診断しました。

クッシング症候群は大きく2つ(①下垂体性:PDH、②副腎腫瘍性:AT)に分類されます。全体の90%がPDHと言われており、当該症例もこのPDHと判断しました。

治療はステロイドホルモン合成を抑制する『抗ホルモン剤』を1日1回でスタートします。もしも、ぐったりしたり、嘔吐、震えが出た場合には薬の副作用を考える必要がありますので、投薬は中止して動物病院へ連絡してください。

製薬会社さんが作成の資料です。

抗ホルモン剤による治療は基本的に生涯続きますが、抗ホルモン剤治療効果が良好で多飲多尿などの臨床症状がなければ休薬することもあります。もし薬が体質に合わず副作用が出てしまった場合には薬の変更をするか、外科的に副腎を切除するか、脳下垂体を切除あるいは放射線療法を選択する必要があります。当院では内科治療のみ対応しており、外科手術や放射線療法をご希望される場合には二次診療施設を紹介させていただきます。

当院で扱う『トリロスタン』