精巣腫瘍にはいくつかタイプがあります。
・セミノーマ(精上皮腫)
・セルトリ細胞腫
・ライディッヒ細胞腫(間質細胞腫)
停留精巣(陰睾)ではセミノーマ、セルトリ細胞腫の発生が増え、これらの腫瘍により雌性化(性格変化、乳腺腫脹など)することがあります。
【症例】
柴犬 オス(13歳8ヶ月)体重 16.2kg
【経緯】
陰嚢内に左右1対ある精巣のうち右側の精巣が大きく腫れ、左の精巣は小さく委縮していました。去勢手術2か月前に外耳炎の診察で来院され、その際に精巣腫瘍の可能性についてお話させていただきました。
精巣腫瘍摘出手術は全身麻酔下で『去勢手術』と概ね似た工程で進みます。去勢手術のリスクは軽視されることもありますが、高齢での手術にはやはり心配が尽きません。家族の方が手術を決断するのにとても苦慮したことでしょう。
1か月ほど経過し、精巣腫瘍摘出手術を実施することに決まりました。
手術当日、血液検査で膵臓パネル(Amy:アミラーゼ、Lip:リパーゼ)が高値でしたが体調は安定しており予定通り手術を実施しました。
【手術】
【病理検査結果】
今回のように2種の細胞が腫瘍化することは精巣腫瘍では珍しくないようです。ただし、セルトリ細胞腫では腫瘍細胞からエストロゲン(女性ホルモン)というホルモンが分泌され雌性化、貧血、血小板減少症、脱毛などが起きることがあります。ライディッヒ細胞腫では腫瘍細胞からアンドロゲン(男性ホルモン)というホルモンが分泌されると多発性肛門周囲腺腫や前立腺肥大などが起こります。
本症例では、浸潤性も見られず悪性所見が見られませんでした。手術後の回復も良好でよかったです!!