とても有名なネコちゃんの伝染病です。

ネココロナウイルスに感染し、ウイルスが病原性を発する(突然変異する)ことで発症します。

一度発症すると封じ込める(ウイルスが身体に悪影響を及ぼさないよう抑え込む)事は困難で、多くの場合死に至ります。

強い病原性により腹水・胸水がでるタイプ『ウェットタイプ』と、病原性が比較的弱い『ドライタイプ』があります。

ウェットタイプは封じ込めるのが特に難しく、徐々にネコ体力を奪っていきます。

コロナ禍でペットを飼っていない人にもネコ伝染性腹膜炎の知名度が上がっているようです。コロナウイルスの研究が進むことでヒトの薬が開発され、ヒトの薬をネコに代用できないか・・・様々な治療法が模索されています。

承認された治療薬は現在有りませんが、近年治療薬が登場し、治療に一筋の光が見えてきました。

ヒトの新型コロナウイルス感染症についての実験開発が急速に進み、ヒト用の治療薬を猫へ投与することである程度の効果が期待できるようになってきました。不治の感染症から徐々に治る感染症へと変わってきています。

MUTIAN(ムティアン)国内では流通しておらず獣医師でも一般ルートでは入手できません。当院では取り扱いがありません。

個人輸入によってお薬を配置している病院もありますので、『MUTIAN(ムティアン)、動物病院』で検索して見てください。費用に関してはかなり高額になります。偽物?も流通しているとか・・・飼い主様が個人輸入することはオススメできません。治療薬の選定には十分注意が必要ですから、必ず獣医師と相談の上決めていただきたいです。

承認された治療薬はありませんから、動物病院によって推奨する薬は様々でしょう。

症状の緩和、ウイルスの封じ込め手段としてモルヌピラビル、レムデシビル、シクロスポリン、抗真菌薬、ステロイドを使用する事が可能ですが、それらの効果は症例毎に違うと思います。

現在、当院ではヒト用の抗ウイルス薬(モルヌピラビル)を開始しました。まだまだデータ量が少なくFIP感染症すべてのネコへこの治療を行うものではありません。治療法を模索中の段階ですが少しでも有効な治療に繋がると良いと考えています。

ドライタイプでは高用量シクロスポリンによって完治する事例も報告されています。
投薬が困難な場合、持続性ステロイド注射を行うことも多いです。
整腸剤を併用することもあります。

まだまだ有効な治療法は確立されておらず、FIPはとても強敵です。獣医師としても心苦しい限りです。

投薬ストレス、通院、入院、高額な薬・・・それでも完治せずに命を落とす病気です。

世界中で猛威を振るっているコロナウイルス感染症がいつの日か『治る感染症』になることを祈るばかりです。