犬・猫の混合ワクチン接種は定期的に行いましょう。

近年、混合ワクチンについて動物病院によって考え方のバラツキがあるようにも思います。

当院での取り扱いは次の通り。

・幼少期(1歳未満)のワクチンは従来どおり2回または3回接種

・成犬・成猫(1歳以上)のワクチンは毎年あるいは3年毎に接種

その仔によって(生まれた環境、今後の生活環境、接種歴、アレルギーの有無等)、ワクチンプログラムは変わってきますので、ご不明な点は獣医師にご確認ください。

◆必要に応じた接種をしましょう◆

多くのドックラン、ペット同伴施設では『一年以内の予防接種証明書』の提出が求められます。その際は毎年のワクチン接種をオススメします。また、犬のレプトスピラ病が心配な場合は毎年接種が必要です(レプトスピラ病の予防効果が1年で低下するので)。

過去にワクチン接種によって体調不良になったことがあるワンちゃん・ネコちゃんはワクチン接種をすべきではありません。ワクチン接種後に元気がなくなった…下痢した…嘔吐した…顔が腫れた…全身を痒がるようになった…などなど。『ワクチン後の体調不良』は原因も症状も様々です。

ワクチンアレルギーか…?と思ったら車酔いだったり、来院時の過剰興奮だったり・・・とワクチンアレルギーの判断がつかないケースも多々あります。

◆犬の混合ワクチン◆

当院では現在5種・7種を取り扱っています。

5種:①犬ジステンパー②犬アデノウイルス(2型)③犬伝染性肝炎④犬パラインフルエンザ⑤犬パルボウイルス感染症

7種:①犬ジステンパー②犬アデノウイルス(2型)③犬伝染性肝炎④犬パラインフルエンザ⑤犬パルボウイルス感染症⑥犬レプトスピラ病(カニコーラ)⑦犬レプトスピラ病(イクテロヘモラジー)

レプトスピラ病は今のところ関東地方ではほとんど発生がありません。しかし、旅行等で関西に行くワンちゃん、ドックランなど不特定多数のワンちゃんと遊ぶことが多いワンちゃんではレプトスピラ病に備えて7種を接種することをオススメします。

ワクチン接種によるレプトスピラ病予防効果は約1年なので7種ワクチンを接種する場合は毎年のワクチン接種が推奨されます。

当院では成犬になって5種混合ワクチンを打った場合、効果はおよそ3年持続するため『次回は3年後で大丈夫ですよ!!』とお話ししています。ワクチンの効果が低下する時期に追加接種をすることが望ましいのですが、効果が低下する時期には個体差があります。そこで抗体価検査(外注血液検査で5,500円)を実施して、抗体価が下がっていたらワクチン注射するのが最も良いと思うのですが、抗体価検査には採血ストレスも費用も掛かるので当院では『3年毎の追加接種』をオススメしています。

新型コロナの対策として2022年3月現在、私たちヒトの3回目接種について連日『国は3回目を推進するが、接種率が伸び悩んでいる…』と報道されています。これは2回ワクチンを打った人も数カ月でワクチンの効果(抗体価)が下がるので、2回目から6ヶ月くらいたつ人は3回目を打ちましょう!という政策なのですが、副作用等の懸念があり3回目を接種する人が思ったより少ない事に国が懸念を示しているのですね。ワンちゃんのワクチン接種についても抗体価が下がる頃に追加接種を安心なタイミングで実施することが望ましいです。ワクチンの打ちすぎも、打たなすぎもデメリットだと思います。ご不明な点があればご相談ください。

◆猫の混合ワクチン◆

当院では3種・4種を取り扱っています。

3種:①猫ウイルス性鼻気管炎②猫カリシウイルス感染症③猫汎白血球減少症

4種:①猫ウイルス性鼻気管炎②猫カリシウイルス感染症③猫汎白血球減少症④猫白血病ウイルス感染症

当院では90%以上の猫ちゃんが3種混合ワクチンを接種しています。

ただし、外出する猫さん、白血病ウイルスキャリアー猫が身近にいる猫さん、飼い主さんが猫の保護活動など不特定多数の猫と係わる場合は4種をオススメしています。

カリシウイルスの予防効果(抗体価)は比較的早く減退します(1年程度)。

犬と同様に、成猫になってワクチン接種をした場合『次回は3年後で大丈夫ですよ!!』とお話ししています。ただし、新しくネコさんを迎え入れたり、飼い主さんが猫の保護活動など不特定多数の猫と係わる場合は毎年のワクチン接種をオススメします。

先述しましたが、抗体価検査(外注血液検査で5,500円)を実施して、抗体価が下がっていたらワクチン注射するのが最も良いと思うのですが、抗体価検査には採血ストレスも費用も掛かるので当院では『成猫のワクチンは3年毎の追加接種』をオススメしています。

≪ワクチン接種のお知らせ~ハガキの送付~≫

今まで当院でワクチン接種いただいている患者様には、例年ワクチン接種時期にハガキ『ワクチン接種に関するお知らせ』を送付していましたが、先述の通り成犬・成猫のワクチンを3年毎としますのでハガキの送付も3年に一度とさせていただきます(7種ワクチンをしたワンちゃんには毎年ハガキを送付します)。

≪ワクチン製剤の変更≫

ここ数年、ワンちゃん・ネコちゃんのワクチン供給が安定しない状況が続いています。

ワクチン供給が安定しない背景として、製造過程でのトラブル、製薬会社が開発をやめるケース、新型コロナの影響で物流が不安定な状況があるようです。

当院の取り扱うワクチンも約2年おきに変わっている状況です。2020年から変更していませんが、当院で取り扱っているワクチンもいつ入手困難になるか分かりません。

≪ワクチンアレルギー≫

ワクチンアレルギーの症状は様々です。

①接種部位の痛み・倦怠感・筋肉痛等

 注射したことにより注射部位がズキズキ痛むのか…注射後にしばらく注射部位を気にするワンちゃん・ネコちゃんはチョコチョコいらっしゃいます。また、『ワクチン接種して帰宅した際に、数時間元気がなかった』という話も時々聞きますので、注射部位の痛み・倦怠感はある程度の割合…1割程度??で見られるかもしれません。

循環器・呼吸器症状

 急激な血圧低下・呼吸困難・意識障害などを起こすものを『アナフィラキシーショック』と呼びます。アナフィラキシーショックは、多くの場合ワクチン接種後30分以内に発症します。

 具体的な症状としては、ぐったりして立てない・舌が青くなる・低体温などが認められます。緊急性が高く放っておくと死に至る可能性もありますが、迅速に適切な対応をすればほとんどの場合命を救うことができます。

皮膚症状(顔の腫れ・痒み・赤み

 顔が腫れたり、皮膚の痒みが出る場合があります。多くはワクチン接種から数時間~12時間程度で、遅くとも24時間以内には発症します。アナフィラキシーショックほどの緊急性はありませんが、注射による処置が必要な場合が多いです。

消化器症状(嘔吐・下痢)

 ワクチン接種後2~3日の間に発症し、多くのケースで重症化せずに経過観察で改善します。『ワクチンアレルギー』の判断に苦慮することが多いのですが、次回のワクチン接種時には獣医師に相談の上、接種後の体協管理には十分注意してください。

先月、ワクチンアレルギーと判断した症例が2例来院されましたので紹介します。

【症例①】バーニーズマウンテンドック 3か月齢 2回目の混合ワクチンで来院

当院でワクチン接種後、帰宅したら顔面が腫れてきた!とのこと。

上の写真のワンちゃんは、ワクチン接種後、急激に顔面が腫れる症状『ムーンフェイス』を発症。

アレルギー治療のため注射を実施し、3日間内服薬を処方しました。

【症例②】ミニチュア・ダックス 3か月齢 2回目の混合ワクチンで来院

帰宅後2時間で顔の腫れに気付いた!とのこと

症例①のバーニーズと同様にアレルギー治療のため注射を実施し、3日間内服薬を処方しました。

特に当院でのワクチン接種方法に変更点はありませんし、偶然に症例が続いたものと判断しています。

ちなみに…動物病院によってはワクチン接種は午前中のみに限定しています。これはワクチンアレルギーを想定したもので、もしも夕方にワクチン接種をして動物病院が閉まった夜間にワクチンアレルギーが発症したら対応ができない!!と配慮したものです。