『腕が腫れている』との主訴で来院したネコさん2症例

症例1

9才 メス(避妊手術済み) 三毛猫 

『1か月前に一度腫れたことがあり、自然治癒した。ところが、同じ場所が昨日から急激に腫れ始めた』

外観(解りにくいですが、上腕が腫れています。)幹部はやや熱感を帯びていますが、こちらが触った際に痛がる様子はありませんでした。

レントゲンでは肘関節の骨棘、軟骨下骨の骨硬化が見られました。

患部をエコーで確認しながら、関節液を抜きました。粘稠性のある関節液が約30ml抜けました。

症例2

14才(メス)避妊済み 日本ネコ 

『右脇にシコリがあるのに気付いた。いつからなのか不明。患部が痛むのか最近食欲が落ちた。』とのこと。患部には熱感があるが、症例1と同様に触って痛がる様子はありませんでした。

関節液を抜いたら、食欲は戻ったとのこと。このネコさんは食欲が低下すると関節液を抜きにご来院されました。

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いずれも中高齢の猫さんです。

定期的に関節液を抜く処置が適切かと思います。

関節包という関節液が溜まる袋が拡張して粘稠性の関節液が溜まってしまうのですが、手術で関節包をきれいに除去すれば粘液貯留しなくなるかもしれません。

当院では手術実績はなく、注射針を用いて関節液を定期的に抜くことをお勧めしています。

猫はしなやかな動きをする動物で『関節炎』『関節痛』という印象が湧かないかもしれません。猫は痛みを隠す習性もあり、一緒に暮らしていてもビッコ、跛行などの変化を示さないかもしれません。10歳を超えると90%の猫が変形性関節症を患っていると言う報告もあります。変形性関節症の進行予防に有効な薬も開発されていますのでジャンプしなくなった、毛づくろいしなくなった、伸びの時間が短い、排尿・排便姿勢がぎこちないなどが見られたら動物病院へ相談いただくと良いかと思います。軽度な関節炎はレントゲン検査で検出されないケースも多々ありますが、逆に言うとレントゲンで検出される程の病変がある場合は痛みの緩和治療を検討いただくのも一つかと思います。

私自身の痛みで考えると四十肩でしょうか・・・特に治療はしていないのですが、今後肩こりとか、仕事に支障が出たら何とかしなきゃな・・・と言ったところでしょうか。

実際に猫が変形性関節症の場合、有効な治療の選択肢が少ないのも事実です。

1か月に1回、フルネベトマブを注射することで猫の変形性関節症に伴う疼痛緩和が有効とされています。患部を温めてマッサージしたり、ステロイドの内服治療、レーザー治療も選択肢かと思います。

一般的な消炎鎮痛剤はネコへ長期投与しにくいあるいはできないので、悩ましいですが、生活に支障のある痛みについては早期に動物病院へご相談ください。