リンパ腫とは『血液のがん』と言われ、体のどこにでも発生する可能性があります。

発症には遺伝要因(リンパ腫の発生が多い犬種がある)と環境要因(除草剤や磁場との関連する可能性)とが関連していると言われています。

さて、リンパ腫は様々な部位で発生しますが、もっとも一般的な身体所見はリンパ節の腫れです。複数のリンパ節が同時に腫れたり、他の部位・臓器へ浸潤していきます。

【イメージ画像】 リンパ腫の腫れ (後述する症例とは無関係です)

首のリンパ節が腫れるとイビキをかくようになったり、呼吸することが苦しくなったりします。内股のリンパ節が腫れたら後足がむくんだり、排尿・排便障害が出たり様々な病態が起きます。リンパ節の腫れは数日で急激に進むことが多く、診察で『4・5日前から喉に腫れがある』との主訴で来院された患者様の喉には3cm以上に顕著にリンパ節が腫れた状態で来院されるケースが多いと感じます。

【症例】

1~2カ月毎にトリミングで来院する元気いっぱいのキャバリアさんです。

時々目の診察に訪れることがありましたが、1年前の健康チェックでも異常を認めず日常を元気に過ごしていた矢先でした。

7歳(去勢オス)体重13.9kg 体温38.9℃

『今日喉のシコリに気付いた。目が腫れぼったい』との主訴で来院されました。

元気や食欲に問題なく、いつも通りの生活を送っているとのこと。

しかし顎の下のリンパ節が顕著に腫れていました。

顕著なリンパ節の腫れがある場合、細胞の検査が必須です。

細胞を当院にて検査したところ、腫瘍を疑い外注検査が必要でした。

外注検査の結果が出るまで1週間ほど要し、その間内服薬(抗生物質とプレドニゾロン)を1週間分処方しました。

細胞の結果は『非典型的リンパ節過形成悪性腫瘍(リンパ腫)と腫瘍ではない病変(反応性過形成)がはっきりしない状態』との結果でした。

また、クローナリティとうい精密検査の結果は『B細胞リンパ腫』と診断されました。

クローナリティ検査結果『Bリンパ球のモノクローナルな増殖』

この結果から悪性の血液細胞のがん『リンパ腫』の診断を確定しました。

飼い主様は結果を受け入れるのがとてもつらい様子でした。

結果をご家族で受け止め、治療方針を検討いただきました。

数日後、治療方針を決めるためご意向をうかがい、ステロイド治療を続けていく事にしました。リンパ腫に対し『ステロイド剤』は2か月間程度生活の質を改善させる効果があるとされています。ステロイド剤は抗がん剤ではないので腫瘍細胞にダメージを与える力はありませんが、抗腫瘍効果が短期間期待できるお薬です。

ステロイド治療を始めても顎のリンパ節が顕著に小さくなることはありませんでした。

ステロイド治療を始めて1か月・・・顎のリンパ節が腫れ呼吸が苦しい状況になり、安楽死をご家族で検討していると相談があったさなか、家族に見守られ天国へ旅立ちました。

【最後に・・・】

ブログの内容とは全く関係ないのですが・・・

当院で遭遇した症例や出来事をブログに掲載しています。これはブログが積み重なったとき、自己紹介になると考えています。ブログの内容から『小手指ペットクリニックはこんな事をしている動物病院なんだ』と伝われば幸いです。

ただ…症例の飼い主様がご覧になったらいい気持ちはしないのかな。とも思います。悲しみがこみ上げ、いたたまれない気持ちになるだろうと思います。

ですが、同じ病気に悩み苦しむワンちゃん・ネコちゃんが居て、その方たちに症例報告という形で情報提供できればお役に立てる何かが含まれていると考えています。今後も当院の取り組みをブログ掲載し、時には役立つ情報があれば幸いです。時が経ち…現在ブログ掲載した内容を振り返った時、恥ずかしく思うこともあると思いますが続けていこうと考えています。