乳腺腫瘍は犬、猫で一般的に遭遇する機会の多い腫瘍で、雌犬では全腫瘍の52%を占め、良性及び悪性の比率は50:50と言われています。

小型犬では良性がやや多いとも言われていますが・・・ 悪性の場合小型犬、大型犬問わず肺やリンパ節への転移、乳腺周囲組織への浸潤を起こす事があります。転移等を伴う悪性腫瘍の場合、摘出手術は困難で治療の選択肢が限られます。この度、肺転移を疑うワンちゃんが居たのでブログ掲載します。

犬の乳腺腫瘍で「悪性」は度々遭遇するのですが、上の画像で示した症例ワンちゃんは『最近、咳をするようになった。』との主訴で来院され、レントゲン画像に示した転移所見を見てとても驚かれていました。

『咳』という耳馴染みのある一般的な症状が、命に関わる重大状況であることを受け止めるのは困難な様子でした。

実際に抗がん剤(ドキソルビシン、ミトキサントロン)治療を行うとある程度の延命効果を期待できますが、他の悪性腫瘍にも言えることですが完治を期待できるものではありません。『良性』『悪性』の区別はもちろん大切なのですが、悪性の中にステージ分類があり、ステージによっても治療効果、予後は大きく異なりますのでご注意ください。肺転移を伴う悪性腫瘍で進行の早いケースですと、発見から2~3カ月程度でなくなるケースもあります。

乳腺腫瘍の好発犬種はプードル、ダックスフンド等で、チワワでは発生頻度が低いとされています。乳腺腫瘍の発生はホルモンに関係し、避妊犬と未避妊犬とを比べると未避妊犬の発生率は7倍になります。避妊手術時期による乳腺腫瘍発生率は初回発情前で0.05%、2回発情後で26%となりますので6ヶ月~1歳での避妊手術により約9割予防できる事になります。

余談ですが・・・避妊手術をするか否かは飼い主さんの自由です。疾病予防の観点からペットを長生きさせたければ手術したほうが良いと思います。ある程度高齢になって避妊手術をする場合、基礎疾患等で俗に言う“手術リスク”が高くなり、また乳腺腫瘍の抑止効果もなくなるからです。避妊手術の価値観はそれぞれですが、「避妊手術のメリット(疾病予防)を知らなかった!」という声を多く耳にすることも事実です。是非、フィラリア予防等で動物病院へ足を運ぶ際は飼い主さんと動物病院とで様々な情報を共有していただきたいと思います。

また、猫では乳腺腫瘍の9割が悪性で、予後も悪いことが多いのですが、良性の事もあります。

次に良性乳腺腫瘍の猫ちゃんの事例を紹介しておきます。

この猫ちゃんは1歳未満で避妊腫獣をしていて、5歳で乳腺腫瘍を発見、手術を行いました。

手術後に実施した病理検査で『良性』!!手術から2年が経過していますが再発もなく元気に暮らしています。