消化管は食道・胃・小腸(十二指腸・空腸・回腸)・大腸(盲腸・結腸・直腸)と続く口から肛門までの管状構造を指しますが、発生する腫瘍は多種に及びます。小腸に発生した血液細胞の腫瘍『リンパ腫』の症例についてです。

一般的に進行が速く、積極的な治療を行っても悪化していく事が多い腫瘍です。

5~6歳の若い時期にも発生が見られ、飼い主様にとって状況を受け入れることはとても難しいと思います。

『リンパ腫』は全身どこにでも発生する可能性があり、遭遇頻度の高い腫瘍の1つですが、タイプがいろいろあり、タイプにより推奨される治療法も様々です。ペットなどを同様な病気で亡くされた経験のある方はこのブログを見て不安になったり悲しく思ったりするかもしれません。現状では積極的な治療を施しても根治することは難しく進行の速い『リンパ腫』について情報提供したいと思いブログ掲載します。

【症例】

柴犬 6歳 避妊メス

今まで食欲旺盛、食ムラなく排泄も安定していた元気な柴犬さんです。

顕著な症状が出る2か月前に食ムラ(特に朝食の際に食べが悪い様子)がありました。

血液検査では肝臓、膵臓関連の項目に異常があり、食餌変更や胃腸薬で様子を見ていました。

食餌変更すると数日たべるが、すぐに食ムラがでてしまう状況が続き、体重も少しずつ減少しました。元々元気な子でしたので、異物誤食でもした?(日頃から散歩中に小石などを食べるので…)と心配しましたが、食ムラの原因は異物誤食ではないようでした。

元気がなく、吠えることも少なくなったのは食ムラが出てから2か月後。

腹部超音波検査でお腹のリンパ節が腫れていたので、鎮静処置を行い、その腫れたリンパ節の細胞検査を実施したところ『小型リンパ球が主体のリンパ節過形成』 “大きな異状なし” という結果でした。試験的にステロイド性消炎剤治療をスタートしたところ、見違えるように元気になり、食欲旺盛に戻りました。

ステロイド性消炎剤の治療を始めてもお腹のリンパ節は大きくなり続けたので消化器の専門病院を紹介させていただきました。紹介先の病院で内視鏡検査を実施し、十二指腸・回腸・結腸の病理検査、リンパ系細胞クローン性解析を実施したところ『T細胞リンパ腫 大細胞性高グレード』との診断でした。

内視鏡画像
クローン解析結果(十二指腸・回腸に腫瘍を示す結果)

この病気は状況にもよりますが多くのケースで手術による病変部切除は推奨されません(状況により腫瘤が限局している場合は手術が適用になります)。抗がん剤治療を行っても余命2-3か月という病気です。飼い主様は抗がん剤治療を希望されませんでした。

診断から3週間、家族に見守られ天国に旅立ちました。

【T細胞リンパ腫 大細胞性高グレード】

当院では抗がん剤注射(Lアスパラキナーゼ)を週1回の治療をスタートします。

リンパ腫の治療法は多岐にわたります。担当獣医師とよく話し合って決めていきましょう。

【治療の選択肢】主要な3大治療(外科切除、化学療法、放射線治療)に加え、支持治療や緩和治療が併用されるケースがあります。

・外科切除

・化学療法(抗がん剤治療)

・放射線治療

・免疫療法

・ステロイド性消炎剤

・ホメオパシー

・サプリメント