性ホルモン関連性皮膚炎の一例

小手指ペットクリニック 2017年09月11日 - 21:09:37

9歳、雄のポメラニアンさん。

数ヶ月前からの広範囲脱毛があり、最近皮膚炎が悪化したとのことで来院されました。

元気で一般状態は良好。去勢手術はしておらず、今まで大きな病気歴なし とのことでした。

先ず、身体検査!!

 

皮膚の状況、お腹(内股)の膨らみを考慮し、皮膚の細菌検査と血液検査、超音波検査を実施しました。

皮膚に細菌が繁殖する『表在性膿皮症』が確認されました。

血液検査で大きな異常なし。(ホルモン検査 エストラジオール:正常)

超音波検査で膀胱壁の肥厚、前立腺肥大、前立腺付近に腫瘤性病変(シコリ)が確認されました。

 

このシコリは何か・・・液体が溜まっていたので採取すると灰色~茶色の液体が採取され、炎症細胞が主であったことから前立腺膿瘍を第一に考え、

その他に潜在精巣、リンパ節膿瘍、前立腺や消化管の腫瘍を疑いました。

飼い主様と話し合った結果、去勢手術及びシコリの摘出手術をすることにしました。

手術

陰嚢内には右側精巣のみが確認され、お腹のシコリは左側精巣の可能性が高くなりました。

標的のシコリ上の皮膚を切開し、シコリを露出させると『精巣』が確認できたので、切除し手術を終了しました。

  

シコリは細胞の精密検査を経て『セルトリ細胞腫』と判明しました。

雄のワンちゃんの1~2%が潜在精巣と言われており、時々遭遇します。

遺伝的背景が強く、成長に伴い今回のワンちゃんのように腫瘍化(腫瘍の発生率は10%程度)するので、多くの場合若齢で去勢手術が行われます。

『セルトリ細胞腫』は多くのケースで手術により治癒しますが、転移など悪性の挙動をする(10~20%)ことがあり楽観視はできない旨をお話し、1泊入院を経て元気に退院しました。
『セルトリ細胞腫』では女性ホルモン(エストラジオール)が分泌されるケース、されないケースがあり、今回はされないケースだったんでしょう。ちなみにエストラジオールが分泌されるケースではホルモン作用により重度貧血が起きることがあります。

現在、被毛はふさふさで元気に過ごしています。