犬の急性膵炎の一例

小手指ペットクリニック 2017年04月18日 - 10:04:57

動物の嘔吐は飼い主様にとって心配な症状の1つですよね。

・普段吐かないワンちゃんが、突然吐いている・・・

・普段から1回/週程度吐くけど、昨日から3回以上吐いている・・・

・フード変更してから朝方に吐く・・・

・長時間お留守番すると吐く・・・  など嘔吐の頻度、重症度も様々です。

 

『膵炎』を発症したワンちゃんの症例です。
 

11才 M.ダックスフント 去勢オス

主訴:2日前に食用油を吸ったキチンペーパーを食べて以来気持ち悪そうにしている。

食欲なく、元気もない。数回胃液を吐いた。

血液検査(抜粋)

WBC白血球数 30700/μL

ALP 962U/L

Lip >1000U/L

CRP >7.0mg/dl

超音波検査

胃内異物、腸蠕動運動低下、胆泥貯留、膵臓腫大(エコー源性は正常) 

 
 

 

キッチンペーパーを食べて以来の症状であり、上記検査結果を踏まえキチンペーパーによる胃腸の不完全閉塞及び膵炎の発症を疑いました。催吐(薬で嘔吐を引き起こすこと)処置しましたが、嘔吐が起きず内視鏡で胃内異物(恐らくキッチンペーパー)を除去することとしました。下の写真は内視鏡で除去したキッチンペーパーです。塊の状態で1度に取り出せれば良かったのですが、内視鏡で確認しながら鉗子で少しずつ取り出しました。

 

あとは胃腸の動きが正常に戻し、膵炎の治療をします。

点滴などによる内科的治療が主となります。

日常のフードもこちらからオーナー様へ提案しつつ、1泊入院を経て、退院となりました。

退院後1週間後の血液検査では、まだ心配が残る結果でしたが、退院後3週間後には大分良くなり元気で日常生活に不安がないことから治療終了となりました。

超音波検査で胆泥貯留があったことから、『肝臓薬』は今でも続けています。

『膵炎』と言っても原因、重症度、治療に要す日数はかなり異なります。一般的に元気がなくなり頻回嘔吐、下痢を起こす病気です。

お腹がギュルギュル鳴ったり鳴らなかったり・・・俗に言う胃腸炎と初めは似た症状ですからオーナー様も『しばらく様子を見よう!!』と考えるのも分かりますが嘔吐が目立ったり、嘔吐の原因に心当たりがある際は早めに動物病院を受診し、治療を開始しましょう。

≪犬の急性膵炎≫

原因・危険因子:食餌(高脂肪食、無分別な食餌)、薬物、品種(シュナウザー、ヨーキー、コリー)、内分泌疾患(副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、糖尿病、甲状腺機能低下症)、その他(肥満、高TG血症、高Ca血症、炎症性腸疾患)

実際、原因の特定は困難なことが多いです。今回記した症例はキッチンペーパーに含まれた食用油と、キッチンペーパーが胃内に異物として留まったことが重なって膵炎が起きた症例です。
治療:早期治療が重症化を防ぐと言われており、急性膵炎が疑われる場合には入院が原則となります。安静、点滴、嘔吐止め、鎮痛薬を併用していします。絶水・絶食が推奨されることもありますが、嘔吐をコントロールしつつ出来る限り早期に摂食する事が大事であると言われています。再発する事が多々ありますので、体質改善、危険因子の排除、基礎疾患の治療を継続して行うことが大切です。
予後:膵炎により活性化した炎症細胞が全身に作用し全身性炎症性反応症候群(SIRS)、多臓器不全症候群(MODS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)など重篤な合併症を引き起こし、死に至ることもあります。