ワンちゃんの腹部膨満(循環不全による腹水貯留)

小手指ペットクリニック 2017年04月13日 - 20:04:25

『ワンちゃんのお腹が膨れてきた!!』 part2です。

先日ブログで書いたように腹部膨満の背景には肥満、便秘、胃腸内ガス、お腹の腫瘍、お腹の出血・液体貯留などを考えていきますが、今回は心臓病による腹水貯留について書きたいと思います。ちなみにフィラリア(犬糸状虫)感染でも腹水貯留する事があります。フィラリアについては、夏(蚊のシーズン)に動物病院に行くとたいてい予防啓発ポスター等が貼ってあるので皆様ご存じのことと思いますが、今回は心臓病により血液循環に支障をきたしお腹の中へ血液の液体成分が漏れ出し『腹水』として溜まったケースです。

    

14歳 雑種(屋外飼育、フィラリア予防未実施) 避妊メス

主訴:6か月前に前足が腫れたことがあった。ここ最近お腹が膨れてきた。元気・食欲は問題なし。

聴診:中~重度心雑音あり(LevineⅢ~Ⅳ/Ⅵ)

血液検査 ALP >3500U/L  CRP 0.6mg/dl

フィラリア検査:陰性                      

レントゲン検査:気管の挙上があるが、著しい心肥大なし(VHS 11.0)、肺水腫は認めず。やや右心房が肥大している。
各種検査をとおして、便秘、胃腸内ガスは否定され、お腹の中の腫瘍、心不全による液体貯留を考慮し、お腹に溜まった腹水を抜いて検査することとしました。
 

腹水を700ml 抜いて、腹水の検査をしたところ、悪性腫瘍を考慮すべき細胞が検出されなかったので心臓の治療をすることとし、血管拡張薬などの『強心剤』を1日2回、うっ血軽減のため『利尿剤』を1日1回続けることにしました。
現在はこのワンちゃんは、新たな腹水貯留もなく元気に過ごしています。

≪犬の僧帽弁閉鎖不全症≫
ワンちゃんでは非常に多い病気です。10歳以上のワンちゃんの30%が罹患していると言われています。
心臓は休むことなく働き続ける臓器で、悪化した心機能が劇的に良くなることはないため、早めの治療開始が悪化防止に大切と言われています。

原因・・・遺伝的なケース、弁の粘液腫様変性といって弁の変性・脆弱化、心筋症など
症状・・・咳、運動を嫌がる、チアノーゼ(血色不良、舌が紫色になる)、失神
診断・・・血液検査、レントゲン確定診断は超音波検査を実施
治療・・・内科的に心臓保護することが主体で、食餌療法、サプリメントを併用します。外科的治療は一般的とは言えません。
薬の副作用の事例は少なく治療開始は早い方がいいでしょう。ただ、獣医師の判断なしで治療を止めることはワンちゃんにとって急激な体調不良をもたらすことがあり要注意です。
薬の副作用は少ないですが、食欲不振、下痢、吐き気などがあげられます。
予後・・・進行が早いケース、遅いケースが様々です。ワンちゃんは加齢に伴い心臓に負担を抱えることが多いですが、僧帽弁閉鎖不全症を患って内科療法をせずに生涯を全うする子もいます。薬を3~4種類、1日2回続けても体調が安定しない子もいます(当院では専門病院を紹介します)。

人も動物も突然死につながりうる重大な病気です。今まで元気だったのに突然倒れて動物病院へ行ったら『心臓病』と診断された!!という話を耳にします。
心臓病が進行して、初めて症状が出ることが多いですので咳、呼吸ゼーゼー・はーはーなど気になることがあったら早めに動物病院を受診しましょう。