免疫介在性血小板減少症

小手指ペットクリニック 2020年06月23日 - 18:06:40

『首のシコリから出血が止まらない』との主訴で来院

体重5.7kg 心臓に雑音(弁膜症、僧帽弁閉鎖不全症)がありますが、性格の良いマルチーズさんです。

血液検査では、白血球増加、軽度貧血(Ht 33%)、血小板ほぼなし、ALP軽度上昇、その他正常

レントゲン検査、腹部超音波検査では大きな異常認めず

右耳の後ろの首に直径7cmの腫瘤があり、ジワジワ出血が続いていました。

また免疫介在性血小板減少症の特徴なのですが、背中・お腹の皮膚に紫斑(アザのような皮内出血)が広範囲に見られました。

   

オーナー様と病気についてお話させて頂き、手術により皮膚腫瘤を切除すると同時に、『免疫介在性血小板減少症』治療を行うこととしました。

手術後の止血は問題なく(右下の写真。手術部位は数日間 内出血し紫斑になりました。)、手術後4日目で血小板数 127,000個/μlまで上昇しました。

  

手術部位は経過良好で、手術後12日で抜糸しました。

血小板数 686,000個/μlまで上昇し、健康面も問題ありませんでしたので、徐々にお薬の量を減量しているところです。

 

免疫介在性血小板減少症は、ワクチン接種、腫瘍、感染症に続発する事がありますが、当該事例のワンちゃんには『首にできたシコリ』が原因かもしれません。感染症関連の有無については、特定する事が困難ですが、飼い主様の所感ではここ数カ月体調不良を起こすような思い当たる体調変化はなかったとのこと。

この病気は、自己血小板に抗体産生が起き、抗体が結合した血小板がマクロファージによって貪食・破壊される病気です。止血に重要な役割をはたす血小板が不足することで、出血傾向になります。出血は皮膚の内出血(紫斑)、消化管内出血による鮮血便・黒色便、目の充血などでオーナー様が異常に気付く事が多い病気です。当該事例のように皮膚腫瘤からの出血、歯肉炎からの出血などもともと存在する傷からの止血異常をもたらします。

このワンちゃんは、経過が非常に良好でした。この病気は投薬による反応が様々で、高用量投薬しても反応せず、複数の薬剤を併用しても血小板数が改善しない場合もあります。

また、治療経過が安定し 治った!!と思っても、お薬を止めてしまうと再発する事も多々あります。第一選択薬にプレドニゾロンを使用しますが、当該事例のワンちゃんはプレドニゾロンによって多飲多尿、尿失禁の症状が出てしまうため、シクロスポリンを使っています。

お薬は3ヶ月から6ヶ月かけてゆっくり減らしていきます。再発していない事を確認しながら投薬量を少しづつ減らしていく事が必要なので、焦らず、しっかり治療を続けましょう!!